自分の得意と不得意を可視化する最新知能検査:WISC-VとWAIS-IV
人には誰しも得意なことと苦手なことがありますが、その差が非常に大きく、日常生活に支障が出ている状態を「生きづらさ」と感じることがあります。その背景にある脳の仕組みを解き明かすヒントになるのが、世界的に信頼されている知能検査です。
現在は、子ども向けのWISC-V(ウィスク5)と、成人向けのWAIS-IV(ウェイス4)が最新版として活用されています。この2つは対象年齢だけでなく、測定する力の分類方法にも違いがあります。
1. WISC-V(5歳〜16歳11ヶ月)で測る5つの指標
最新のWISC-Vでは、これまでの検査よりもさらに細かく、子どもの学習や生活に関わる力を5つの視点から分析します。
■言語理解
言葉の知識や、物事の概念を理解して説明する力です。授業の内容を理解したり、自分の気持ちを伝えたりする力の基礎となります。
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視空間
目で見たものの形や位置関係を正確に把握し、組み立てる力です。図形の問題や、物の配置を覚えることに関わります。
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流動性推理
初めて経験する問題に対して、共通点や法則を見つけて解決策を導き出す応用力です。未知の課題への対応力を示します。
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ワーキングメモリー
耳や目から入った情報を一時的にとどめておき、頭の中で処理する力です。指示を覚えておく、暗算をする、といった作業に関わります。
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処理速度
目で見た情報を素早く、正確に書き写したりチェックしたりするスピードです。ノートを取る速さや、単純な作業の効率に影響します。
2. WAIS-IV(16歳〜90歳11ヶ月)で測る4つの指標
大人のためのWAIS-IVでは、主に以下の4つの視点から知的な能力を測定します。
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言語理解
WISCと同様、言葉の知識や論理的な思考力です。社会生活におけるコミュニケーションや知識の活用力を測ります。
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知覚推理
WISC-Vでは視空間と流動性推理に分かれていますが、WAIS-IVではこれらを合わせた視覚的な情報の処理能力として測定します。目に見える情報から意図を汲み取ったり、パズルを完成させたりする力です。
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ワーキングメモリー
耳で聞いた情報を一時的に保持し、操作する力です。仕事のマルチタスクや、会話の文脈を追い続ける力に関係します。
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処理速度
視覚的な情報を素早く正確に処理する力です。事務作業の速さや、時間制限のある仕事への適応力に関わります。
3. 発達障害との深い関連性
知能検査は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達障害の特性を理解するために非常に重要です。
発達障害がある場合、これらの指標の間に大きな差が生じやすいのが特徴です。例えば、言語理解は非常に高いのに、処理速度だけが極端に低いというケースがあります。この場合、周囲からは「理解しているはずなのに、なぜか作業が遅い」と誤解されがちですが、本人の脳内では、理解したことにアウトプットが追いつかないという強い葛藤が起きています。
また、ワーキングメモリーが低い場合は、指示を忘れてしまうことが多くなり、ADHDの「不注意」という特性を強める要因になることもあります。検査によってこの差を可視化することで、本人の努力不足ではなく、脳の特性によるものだと正しく理解できるようになります。
4. 検査をどう役立てるか
検査の本当の目的は、診断名をつけることではありません。自分の「取扱説明書」を手に入れることです。
例えば、耳で聞くワーキングメモリーが弱く、目で見る視覚的な力が強いとわかれば、「指示は口頭ではなく、付箋やメールで書いてもらう」という具体的な工夫が見えてきます。こうした自分の特性に合った環境を整えることを「合理的配慮」と呼び、学校や職場に協力を求める際の客観的な根拠にもなります。
一人で抱え込まず、カウンセリングへ
自分の特性を知ることは、時に勇気がいるかもしれません。しかし、自分の「苦手」の正体がわかれば、それに対する「攻略法」を考えることができます。
カウンセリングでは、検査結果の数値だけではなく、あなたがこれまでの人生で感じてきた苦労と照らし合わせながら、これからどう歩んでいくかを一緒に考えていきます。もし、日々の生活で「なぜかうまくいかない」と立ち止まっているのなら、専門家のサポートを借りてみませんか。あなたの特性を活かせる道を、共に見つけていきましょう。
検査は、心理士のいる精神科・心療内科で可能です(対面のところのみ)。
カウンセリングにご相談の際は、その結果をもっていらっしゃることで、カウンセリングがよりスムーズに進み解決につながりやすいのでお勧めです。
また、それ以外のほとんどの心理検査については、オンラインでも可能ですのでご興味のある方はご相談ください。